Nevertheless, I believe in music.

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ありきたりな女 - 椎名林檎

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先日ちょうどテレビで彼女のライブの映像を見てる時に初めて聞いた曲で、

これまでみたいに私がずっと好きで大事に聴いてきた曲、てのとは違うのだけど、

歌詞を聞いていたら、じんわり涙が出ちまったので、その事を書こうかなと思う。

 

だって私があの頃に感じたことそのままだったから。

 

 

ありきたりな女

ありきたりな女

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ありきたりな女

作詞:椎名林檎

作曲:椎名林檎

幼い頃から耳を澄ませば、

ほんとうに小さな音も聴こえて来た。

遠い雲が雨を手放す間に、木々の笑う声。

時と言う時はそう音楽になり、

欲しいものなどなかった。
どれほど強く望もうとも、

どれほど深く祈ろうとも、

もう聴こえない。
あなたの命を聴き取るため、代わりに失ったわたしのあの素晴らしき世界。
GOODBYE!

 

唯一の母親に、娘は漏れなく

取って置きの魔法をかけられているのだ。
青い海が陽射しを抱擁する様に、

それは護られていく。

出会すシーンはすべてハイライトで、

みな、掛け替えのないキャストだった。
どれほど強く悔やもうとも、

どれほど深く嘆こうとも、帰れやしない。
わたしは今やただの女。

さよなら、あなた不在の

かつての素晴らしき世界。
GOODBYE

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これは紛れもなく、母になった者の歌う歌だ。

 

あのころ私は、今思えば、自分の中でまったく準備ができていないまま母になった(年齢の問題ではなく)。

 

子どもはまったくもって愛らしく、これを全力で守ると本能が言って聞かないことに驚く。

 

だけど、この授かった宝と引き換えに、捨てざるを得ない世界があるということを、恥ずかしながら私は知らなかった。想像もしてなかった。

 

実は、何年も戸惑い続けていた。

決して病んでいるのではない。

育児をする者なら多かれ少なかれなんとなく燻り続ける感情ではないかと思う。

 

次の子どもがやって来てしばらくした頃、

あの世界のことは、諦めなければならないことに、ようやく気がついた。

 

まぁ、自由、と言い換えても良い。

 

 

歌詞の流れから読み誤ってしまいそうだけれど、この歌は、後悔を歌っているのではない。

嘆き、というのは育児をしたことがある人にはお馴染みの感情だと思う!

後悔だって正直な気持ちだ。何を言ってるんだと言われようと、そう考えてしまうのだから仕方ない。

 

でもこの何にも変えられない悦びはなんだろう。

負の感情ならいくらでも説明できるのに、これはなんと言ったらいいんだろう!

 

歌詞の中に、かけがえのない悦びを見る。

 

そう、この宝を前にして、今や私はただの女だ。

 

あなた不在のかつての素晴らしき世界に、GOOD BYE!と絶叫する感情は、

ただの女となった者たちの吹っ切りであり、決別であり、誓いではないか。

 

これが答えだ

と、何年も戸惑いの中にいたあの頃の自分に、

この歌を聞かせたい。